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このところ良くあることなのだ。夕食の後に、なぜか立っていることも出来ないほどの猛烈な睡魔に襲われる。これに這うようにベットに潜り込んで…。
目覚めれば、夢かうつつか、それともなにかの物語の記憶の断片なのか。腫れぼったい意識の中に、おぼろにかすむ月明かりと、そこに微かに浮かぶ白い振袖の人影…。 主人公が自分なのか、それともほかの誰かなのか…!。 「これはなんだ!」という思いと、「出きることなら振り返りたい!。」だが、その一瞬を振り返ることさえ許されない我が身に歯ぎしりしつつ…。 ヒタヒタと、ヒタヒタと…。月明かりの中に、無言に距離をとって白い振袖姿の娘の影が、追いすがるでもなくついてくる。ヒタヒタと…。 娘は、つまり「許嫁」であったらしい!。 なぜ、「あったらしい!」なのか。どうやら若い武士らしいこの物語の主人公は、この美しい「許嫁」に関わる風評に、どうにも親友と呼ぶべき朋輩をその手にかけてしまったらしい…。 当然、捕えられ、切腹を申し渡される。だが、その武士としての最後のときに、不幸にも、極度の緊張から気絶し意識を失うという失態をさらす。結局、切腹という面目は召し上げられ、士分の剥奪と国払いを命じられ、その失態時の傷も癒えぬままに、辛うじて御家断絶を免れた我が家を出でて、終わることのない漂泊の旅の一歩をあゆみだしたところであるらしかった。 屋敷の外れの生垣に蝋梅が妖気をさそって匂う。ふと見れば、その月明かりの花叢に白い振袖があった。どこをどう抜けてきたのか。袂はかぎに破れ、その無表情に美しい頬にも一文字に血がにじむ。 これに、声をかけることなど出来るわけもなく。無言のままに行きすぎれば、ヒタヒタと、足袋裸足の足音があとに続く。ヒタヒタと、ヒタヒタと…。 悔恨と、慙愧と、娘への想いがその小さな足音に重なるときがどれほどに続いたのだろう。どうすれば良いのか!。 しかし、集落のはずれ。松の老木が月の明かりに濃い影を落とすあたりに、その足音は静かに絶えた。 しばらく、そのままに…! 歯をくいしばりつつ歩みを進めて…。 堪らず! 振り返れば、松の老木の月影の中に白い振袖が小さく、小さくあった。 あふれ出る涙に、その振袖が歪んで……目が覚めた!。 夢か、うつつか…!。 階下の蝋梅が、今夜も妖しく匂い立つ。
by nature21-plus
| 2010-01-31 01:25
| 心象をスケッチする
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